
多発性嚢胞腎
多発性嚢胞腎
「多発性嚢胞腎」という病名を耳にしたことはありますか?
あまり聞き慣れないかもしれませんが、腎臓に液体がつまった袋のようなもの(嚢嚢胞)が徐々増え、それぞきくなっていく遺伝性の病気です。 嚢胞が増えて大きくなることで腎臓が肥大し、徐々にその働きが低下していきます。
末期腎不全へ進行した際は透析や腎移植が必要になります。
多発性嚢胞腎には、常染色体顕性多発性嚢胞腎(ADPKD:Autosomal Dominanto Polycystic Kidney Didease)と常染色体潜性多発性嚢胞腎(ARPKD:Autosomal Recessive Polycystic Kidney Didease)の2種類が存在し、顕性の場合は成人になってから症状が現れることが多いです。一方で潜性の場合は新生児期から症状が現れる重症例が多いですが、近年では軽症例も増えています。
多発性嚢胞腎は初期段階では自覚症状がほとんどありません。しかし、病気が進行すると、以下のような症状が現れることがあります。
腎臓が大きくなることで、お腹が張ってきます。
嚢胞から出血し、尿に血が混じることがあります。
腎臓が大きくなることで、腰に痛みを感じる場合があります。
多発性嚢胞腎は高血圧を合併しやすい病気です。
脳の血管に動脈瘤ができやすくなるため、注意が必要です。
また潜性タイプの多発性嚢胞腎では、典型例では腎機能低下がみられ、透析や腎移植が必要になったり、高血圧を併発することもあります。さらに肝臓の構造異常を合併するため、胆管炎、門脈圧亢進症、食道静脈瘤、血小板減少などがみられることがあります。
多発性嚢胞腎は遺伝性疾患です。
顕性タイプの多発性嚢胞腎では多くの場合、両親どちらかからの遺伝によりこの病気になります。両親に病気がなくても、患者さんが生まれるときに遺伝子の突然変異が起きることにより病気になることもあります。
一方で潜性タイプの多発性嚢胞腎では、多くの場合両親が原因となる遺伝子の変異をもっており、それらが合わさるために発症します。
腎臓の機能が正常に働いているか。クレアチニンの値やクレアチニンから概算されるeGFRから腎臓の機能低下の状態を把握します。
腎臓の大きさをエコー検査やレントゲンなどで計測します。
顕性タイプの多発性嚢胞腎に対しては、尿を濃縮するホルモンであるバソプレシンのV2受容体拮抗薬(トルバプタン)を使用します。トルバブタンは腎臓の嚢胞が大きくなることを防ぎ、腎臓の働きの低下を抑える効果が見込めると報告されています。
潜性タイプの多発性嚢胞腎では現在のところ、病気を完全に治せる治療法(根治的療法)はありません。腎機能障害の状態に合わせた治療を行い、末期腎不全へと進行した場合には、腎移植や透析療法などの腎代替療法を行います。また、肝移植が必要になる場合もあります。
顕性タイプの多発性嚢胞腎は、徐々に腎機能が低下し腎不全となり、透析治療や腎移植治療が必要となります。60歳頃までに約50%の人が腎不全になるといわれています。
一方で潜性タイプの多発性嚢胞腎では、主に重症の肺低形成が原因で生後1か月以内に亡くなる場合があります。生後1か月を過ぎると長期生存が可能となり、その場合、末期腎不全へ進行してしまうのは、生後5年で14%、10年で29%、20年で58%との報告があります。
通常身体は脱水状態になるとバソプレシンというホルモンを分泌し、尿を濃縮することで体に水分を与える働きをします。
顕性タイプの多発性嚢胞腎では、この作用が嚢胞を大きくし、病気の進行を進めることになるとされています。そのため適切な水分摂取を心がけましょう。
また、潜性タイプの多発性嚢胞腎でも、なるべく腎臓に負担をかけないために、脱水状態にならないよう、適切な水分摂取を行いましょう。
高血圧や肥満も病気の進行に関わるといわれているので、普段からバランスのとれた食事や塩分制限など重要です。
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