各検査の詳細
各検査の詳細
白血球は、免疫系の一部であり、ウイルスや細菌などの外来の病原体に対抗する働きを持っています。
白血球数は、感染症や炎症、アレルギー、自己免疫疾患などの体内の異常を検出するために用いられます。
健康診断や雇用時検査では、血液検査によって白血球数が調べられ、通常、成人では4,000~9,000/μlが正常範囲とされています。この範囲を超える場合、感染症や炎症、アレルギーなどが疑われます。一方、範囲を下回る場合は免疫力の低下や骨髄の機能障害が考えられます。白血球数が異常値を示した場合、まずは再検査が行われます。健康診断等で異常が見られれば、一度は医療機関を受診することをおすすめします。
赤血球は、肺から取り込んだ酸素を体内の各細胞に運搬する役割を担っています。赤血球数の異常は、貧血や多血症などの病気を示唆する可能性があります。
健康診断や雇用時検査では、血液検査によって赤血球数とヘマトクリット値が調べられます。赤血球数の正常範囲は、男性で430万~590万個/μl、女性で370万~500万個/μlです。ヘマトクリット値の正常範囲は、男性で39~50%、女性で36~48%です。赤血球数が基準値を下回る貧血には、鉄欠乏性貧血、悪性貧血、再生不良性貧血など様々な種類があります。一方、赤血球数が基準値を超える多血症は、脱水、慢性肺疾患、骨髄腫などの原因が考えられます。赤血球数の異常が認められた場合は、原因を特定するためにさらに詳しい検査が必要となります。
血清クレアチニンは、腎臓の機能を評価するための指標です。クレアチニンは、筋肉で生成された老廃物であり、腎臓から尿中に排泄されます。血清クレアチニン値が高い場合は、腎臓の機能が低下している可能性があります。
健康診断や雇用時検査では、血液検査によって血清クレアチニン値が調べられます。血清クレアチニン値の正常範囲は、検査機関・年齢や性別によって異なりますが、一般的には男性で0.7~1.2mg/dL、女性で0.6~1.0mg/dLです。血清クレアチニン値が高い場合は、腎機能障害、尿路閉塞、脱水などの原因も考えられます。血清クレアチニン値の異常が認められた場合は、腎臓の状態を詳しく評価するために、eGFRや尿検査などの追加検査が必要となります。
シスタチンCは、近年注目されている腎機能の新しい指標です。従来のクレアチニン値よりも早期に腎機能障害を検出することができるとされています。
健康診断や雇用時検査では、血液検査によってシスタチンC値が調べられる場合があります。シスタチンC値の正常範囲は、検査機関・年齢や性別によって異なりますが、一般的には男性で0.6~0.9mg/L、女性で0.5~0.8mg/Lです。シスタチンC値が高い場合は、腎機能障害、糖尿病、高血圧などの原因も考えられます。シスタチンC値の異常が認められた場合は、腎臓の状態を詳しく評価するために、eGFRや尿検査などの追加検査が必要となります。
eGFRは、推算糸球体濾過量の略称で、腎臓の機能を推定する指標です。糸球体濾過量とは、腎臓の糸球体で1分間にろ過される血液量のことを指します。腎臓は老廃物や余分な水分を体外に排泄する重要な役割を担っており、糸球体濾過量はその機能を反映する重要な指標となります。
eGFRの値は、年齢、性別、血清クレアチニン値に基づいて算出されます。一般的に、eGFR60mL/min/1.73m²以上が正常範囲とされています。
eGFR60mL/min/1.73m²未満の場合は、慢性腎臓病(CKD)と診断されます。CKDは進行すると、腎不全に至る可能性があるため、早期発見と治療が重要です。
eGFR30mL/min/1.73m²未満の場合は、高度CKDと診断されます。高度CKDになると、透析療法が必要になる可能性があります。
尿素窒素は、タンパク質が分解されて生成される老廃物の一種です。尿素窒素は血液中の尿素から生成され、腎臓から尿中に排泄されます。
尿素窒素の正常範囲は、8~20mg/dLです。
尿素窒素値が高い場合は、腎臓機能低下、脱水、消化管出血、肝機能障害などが考えられます。
尿素窒素値が低い場合は、肝機能障害、低栄養、腎臓移植後などが考えられます。
尿酸は、プリン体と呼ばれる物質が分解されて生成される老廃物の一種です。尿酸は血液中を循環し、腎臓から尿中に排泄されます。
尿酸値の正常範囲は、男性:7.0~8.5mg/dL、女性:5.7~7.0mg/dLです。尿酸値が高い場合は、痛風、高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病などが考えられます。尿酸値が低い場合は、肝機能障害、低栄養、ビタミンB12欠乏症などが考えられます。
電解質は、体液に溶けて電荷を持つイオンのことです。代表的な電解質には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、クロールなどがあります。電解質は、体内の水分量、酸塩基平衡、神経や筋肉の機能、細胞膜の輸送機能などを維持する重要な役割を果たしています。
電解質の正常範囲は、検査項目によって異なります。主な電解質の正常範囲は以下の通りです。
電解質異常は、脱水、下痢、嘔吐、腎臓病、糖尿病、ホルモン異常など様々な原因で起こります。
尿蛋白は、血液中の蛋白質が尿中に漏れ出たものです。健康な人では、尿中に蛋白質はほとんど含まれません。
尿蛋白の正常範囲は、陰性です。尿蛋白が陽性の場合は、腎臓病、尿路感染症、膀胱炎、前立腺炎、糖尿病などが考えられます。
尿蛋白クレアチニン比は、尿蛋白量とクレアチニン量の比を尿比重で補正した値です。クレアチニンは筋肉で生成される老廃物であり、尿中に一定量排泄されます。尿蛋白クレアチニン比を測定することで、より正確に尿蛋白量を推定することができます。
尿蛋白クレアチニン比の正常範囲は、男性:30mg/gCr未満、女性:15mg/gCr未満です。尿蛋白クレアチニン比が高い場合は、腎臓病、尿路感染症、膀胱炎、前立腺炎、糖尿病などが考えられます。尿蛋白クレアチニン比が低い場合は、脱水、腎臓移植後などが考えられます。
尿糖は、血液中の糖が尿中に漏れ出たものです。健康な人では、尿中に糖は含まれません。
尿糖の正常範囲は、陰性です。尿糖が陽性の場合は、糖尿病、腎糖尿症などが考えられます。
尿潜血は、尿中に赤血球や白血球が混入している場合があります。
尿潜血の正常範囲は、陰性です。尿潜血が陽性の場合は、尿路感染症、膀胱炎、腎臓病、尿路結石、前立腺炎、膀胱癌、腎盂癌などの疾患がある場合があります。
上皮細胞は、皮膚、粘膜、臓器などの表面を覆っている細胞です。
尿中の上皮細胞は、少量であれば正常範囲です。上皮細胞が多い場合は、尿路感染症、膀胱炎、腎臓病、尿路結石、前立腺炎などが考えられます。
円柱細胞は、腎臓の尿細管を構成している細胞です。
尿中の円柱細胞は、陰性であれば正常範囲です。円柱細胞が陽性の場合は、腎臓病、尿路感染症、膀胱炎などが考えられます。
HbA1cは、ヘモグロビンA1cの略称で、過去1~2カ月の血糖コントロール状況を反映する指標です。ヘモグロビンは赤血球中に含まれるタンパク質であり、ブドウ糖と結合して糖化ヘモグロビンとなります。HbA1cは、糖化ヘモグロビンの総量をヘモグロビン全量で割った値です。
HbA1cの正常範囲は、5.7%未満です。HbA1cが5.7%以上の場合は、糖尿病、糖尿病予備群と診断されます。
グリコアルブミンは、アルブミンが糖と結合したもので、過去1~2週間の血糖コントロール状況を反映する指標です。アルブミンは血液中の主要なタンパク質であり、糖と結合してグリコアルブミンとなります。グリコアルブミンは、アルブミン全体の約1~2%を占めます。
グリコアルブミンの正常範囲は、15~25μg/gです。グリコアルブミンが15μg/g未満または25μg/g以上の場合は、糖尿病、糖尿病予備群と診断される可能性があります。
総コレステロールは、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)とHDLコレステロール(善玉コレステロール)、VLDLコレステロールの3種類のコレステロールの合計値です。コレステロールは、細胞膜やホルモン、脂質の運搬などに必要な脂質の一種です。
総コレステロールの正常範囲は、220mg/dL未満です。総コレステロール値が高い場合は、動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞などのリスクが高くなります。
HDL-コレステロールは、善玉コレステロールとも呼ばれ、余分なコレステロールを肝臓へ運搬する役割を担っています。
HDL-コレステロールの正常範囲は、男性:40mg/dL以上、女性:50mg/dL以上です。HDL-コレステロール値が低い場合は、動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞などのリスクが高くなります。
LDL-コレステロールは、悪玉コレステロールとも呼ばれ、血管壁に蓄積して動脈硬化症の原因となるコレステロールです。
LDL-コレステロールの正常範囲は、120mg/dL未満です。LDL‐コレステロール値が高い場合は、動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞などのリスクが高くなります。
中性脂肪は、トリグリセリドとも呼ばれ、エネルギー源として蓄積される脂質の一種です。
中性脂肪の正常範囲は、150mg/dL未満です。中性脂肪値が高い場合は、動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病などのリスクが高くなります。
総たんぱくは、血液中のアルブミン、グロブリン、フィブリノーゲンなどの主要なタンパク質の総量です。タンパク質は、筋肉や骨、臓器などの構成要素となるだけでなく、酵素やホルモン、免疫物質などの役割も担っています。
総たんぱくの正常範囲は、6.6~8.7g/dLです。総たんぱく値が低い場合は、肝機能障害、腎臓病、低栄養などが考えられます。総たんぱく値が高い場合は、脱水、感染症、炎症、多発性骨髄腫などが考えられます。
BNPは、脳性ナトリウム利尿ホルモンの略称で、心筋が負荷を受けた際に分泌されるホルモンです。BNPは、体液量や血圧を調節する役割を担っています。
BNPの正常範囲は、男性:18pg/mL未満、女性:19pg/mL未満です。BNP値が高い場合は、心不全、心筋梗塞、心筋症などが考えられます。
※注意事項
上記の正常範囲はあくまでも目安であり、年齢や性別、検査機関によって異なる場合があります。
検査結果に異常がある場合は、医師に相談が必要です。
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